春望 四月一七日 「光に進む」
昨日の夜、仕込みが終わり寝床についたと思うと、外で土砂降りの雨の音が聞こえ始めていた。
朝目覚めて今日も雨か、と少し仕込んだ種の状態を不安に思いながら眠い目を擦り厨房に向かう。
案の定種は勢いよく容器の外に飛び出していた。
雨の夜はいろいろ考えて仕込まないといけない。
「光」で作るパンはいつもと変わらないものを作る予定だ。
ただその時々で小麦は変わるし製粉仕立ての小麦はさらに不安定なので同じものはできないだろう。
それよりも「光」が届くということが今は大切だと思っている。
光はどこにでもある。
「光」はそんな些細な光を見えやすくするきっかけになるようなものを。
光は続いていく。
寝る間際に友から着信が。
どうやら酒を飲んでいるようだ。
個人と雇われの認識の差はこの事態でより明確になっているようだ。
彼とは地に足をつけつつも未来について大真面目に話せる数少ない友人だ。
明日も早いけれど、今日は楽しい夜更かしをしよう。