春望 三月六日 「木漏れ日」
日の光で目が覚める。やっぱり自然の光で起きるのは気持ちがいい。少しずつ動くモードにスイッチを切り替えていくので光で目を覚ませるのもあと少しかな。
寝る前に窯の前に置いておいた種の調子を見に行く。いい感じだ。匂いもいい。よかった。これで一回仕込んでみよう。種の調子をみるためだ。
9日に実家に帰る都合があるのでお世話になっているのりこさんと三木のお店でお昼を食べる約束をしていて出かけたのだけれどもお店についてから店主さんに、予約したの明日ですよね、と申し訳なさそうに言われてしまった。一日日付けを間違えていた。笑うしかないと店主さんと笑う。まだお客さんも来ていなかったので少しお話しができた。それはそれでそういう運命だったのだろう。休業前に冷凍しておいたパンを渡すことができた。明日の感想が聞きたい。
急いで帰り仕込みを始める。ライ麦も小麦のカンパーニュだ。光に入るカンパーニュは小麦だけのものにしようと思っている。
厨房の配置も変わりなかなか手探りの感じだけれどもそういうのが改めて好きなんだと思った。やってみてその都度考える、効率も悪くある程度段取りを決めた方がいいのだけれども。
パン屋は段取り8割だ。多くの仕事がそうだ。うちはパン屋ではないかもしれないな。
久々に15キロくらいの生地を仕込む。思い出すように粉と水、種、塩を合わせる。手で仕込むとその間に他のことはできない。ひたすらに目の前の混ざりゆく生地と向き合うことになる。尊い時間だ。その時の気持ち、身体の状態が手のひらからの体温で生地に伝わる。そう、手捏ねは機械では代替できないのではないかと思っていたりもする。
がむしゃらに捏ねることはなく、優しく、重ねる、生地の重さを利用してあげるだけでいい。
まだ夜は寒い。完成した生地に麻の布を被せて窯の近くに移動させてあげる。半袖で厨房にいると寒い。生地も同じだ。
室温19°、生地温23°。湿度が、、60パーくらいか。重要な記録だ。毎日の積み重ね。
少し休んだら成形の工程に移り窯の着火だ。
山下りの始まりだ。