春望 二月一六日 「回想」
もう当分来ることもない、まして実家もないので帰って来る理由も少なくなる生まれ育った場所。
最後にとか、そういう気持ちではなくて、この機会に歩いて、触れて、空気を感じてみようと、思い出の場所に向かった。
自分の今は中学生時代にあると思っているんだけれども、そんなかけがえのない期間を過ごした学校。
部活をサボって気になる女の子と暗くなるまで話していた秘密の場所。こんなにおっきな杉の木があったんだと今更気づいた。先生に見つからないように、ずーっと、そっと、見守ってくれてたのかな。
落ち込むと1人になりたくてやってきていた演奏会を開いたら最高なんじゃないかと思う秘密の森。
見えないところで全て繋がっている。
訪れたどの場所も今の自分が恥ずかしくなるくらいエネルギーに満ち溢れていた。また少し、パンを焼く力を分けてもらえた。
パンを作る技術や知識は確かに大切だし、発酵に関しても興味があるし探求していきたいとも思う。ただ、これから大切になってくることはもっと別な場所にあると思っていて、そこはテクノロジーでも代えが効かないもので僕らが次の世代に伝えていくとこでもある。
心が豊かなパン作りを。
心が豊かになる場所へ。
photo by yama