春望 二月一五日 「黒と白」
光は身近であって、だけれどもなかなか見えにくいものだ。
僕自身休業した半年間がなかったら「光」を作ろうとは思わなかったし、ここまで光について想いを巡らすこともなかったかもしれない。
孤独と闇
聞いても見ても、書いても、良い印象は受けない字面だ。
だけれども光は必ずここに存在していた。
わずかでもほんの一握りでも見えていれば大丈夫。そんな一筋の光は隙間から木漏れ日のように広がっていく。そんな尊い光をどうやったらパンとして形にできるのか、あまり難しいはなくて、シンプルに、簡単に、頭よりも手が動くように作っていきたい。先人達が僕らに繋いでくれたパンというものを。それだけでも光輝くものを。
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パンデピスは目を瞑ってふと浮かんでくる色は黒と白だ。見た目は真っ黒なのだけれどもなんで白が浮かんだのか不思議だった。
パンデピスのルーツを辿ると生命の食糧と書いてある文献があったり古くは十字軍の遠征で兵士達の食糧として携帯されていたといつ歴史もある。何よりフランスにいた時に僕がパンデピスと出会うのは決まって教会だった。本当に質素なのだけれども一切れ食べると身体も心も満たされる、そして明日への気力が湧いてくるような、エネルギー溢れるものだった。そんなパンデピスをひたすらに追っているのかもしれない。そうしているうちに結局は自分のものになっていくんだろう。その過程も楽しみたい。
「光」に入れるパンデピスはもっともっとシンプルにそして質素に。華やかな美味しさは求めていなくて、毎日食べられる、何より職人が作り続けられるように。
そして、僕の作ったもので母が最後に口にしてくれたものだから。
祈りを込めて。