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春望 二月二三日 「音楽のある風景」

この日のために自分は関東に残ったんだ。

目を閉じて流れる音に耳を傾ける。

この半年間の出来事が走馬灯のように頭をよぎる。不思議なことにその後に浮かんだイメージは今から20年以上も前、小学校に入りたての頃の記憶だ。

引越し前で今実家がある場所とは別の場所で別の学校に通っていた。小学1年の夏休みまでという短い期間だったけれど、あんなにも時間が長く感じたことは今でもあの期間だけだ。

全校生徒が100人ほどの学校だった。学校自体が大きかったし周りは森と田んぼに囲まれていてその頃はなんだか寂しいなぁと感じたこともあった。

家の前ももちろん森。森の道という僕が名付けた道があり(道なき道だけれど)そこを通って森の下にある学校に通っていた。

緑が生茂る季節にいたこともあり鳥や虫、風に揺れる木々の葉の音、雨が降れば葉にあたる雨の音が絶えない場所だった。

そのことは今となってはすごく尊いことだったんだ。

20年足らずだけれどもそういった自然の声はどうなっただろうか。それどころかそんな声に耳を傾ける時間をとれているだろうか。

今日ありがとうと言っただろうか。

今日空を見上げただろうか。

ふとそこにある木々や木の葉に耳を傾けただろうか。

小さい頃当たり前だったことがそうでなくなっていることが少し寂しくなったけれどもそれでも今日という日は進んでいて未来に向かっている。

そんなことを思いながら涙が流れた。

そして「光」に入るパンが一つ生まれた。頭の中で作っただけだからこれから現場での作業をする中で少し変わってくるとは思う。

自分のパン作りはシンプルでとても簡単だ。

混ぜて捏ねて、膨らませて、最後に薪火の力で焼き上げる。100年は続くだろう方法だ。

誰でもできる。だからこそその作られたものには作り手の人となりが出る。そこはかけがえのない大切な部分でAIやテクノロジーにはとって変わられない部分だと思っている。

素晴らしい音楽が聞けた。さぁ、丹波に帰ろう。

自分のパンを焼こう。